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新年のご挨拶

2026年1月 5日

新しい年を迎えるにあたり、皆様にご挨拶を申し上げます。

わが国は、人口減少、中でも子どもや労働生産年齢人口の急激な減少、膨大な国の債務、円安の進行、物価高、人件費高騰などの波が急速に押し寄せ、社会のあらゆるシステムで大きな軋みが生じています。国立大学もその影響を大きく受け、ミッション遂行に赤信号が灯っています。科学技術立国を支える中核である国立大学に対する運営費交付金はこれまで継続的に削減されてきましたが、今年度補正予算ではようやく、その方針の転換が期待できる形となりました。しかし、これはあくまで一時的な措置であり、今後当初予算において物価や人件費の上昇に応じた運営費交付金増額のルール化が大きな課題であると思っています。一方で、我々は公共財である国立大学で活動するものとして、常に時代の要請に応じ、そしてまた、未来を先取りする形で教育研究活動を推進し、社会の負託に応えなければなりません。

 

東海国立大学機構(以下、東海機構)は、2020年4月に、国立総合大学である岐阜大学と名古屋大学がわが国で初めて県をまたいで法人統合を行い、一法人複数大学方式による新たな国立大学法人として活動を始めました。その背景には、かつてない規模とスピードで変化する人類社会、そのなかでわが国の国際的なプレゼンスが年々低下し、科学技術イノベーションを支えるべき国立大学の機能が世界水準で見ると明確に劣後し、思い切った大学改革なくしては世界と日本をけん引するアカデミックリーダーになれない、という強い危機感があります。統合から6年を経た今、わが国と世界の状況はさらに大きく変わり、私自身が抱いている危機感は一層大きく膨らんでいます。昨年11月に文部科学省から、「国立大学法人等改革基本方針」が公表され、そこには、今後国立大学の機能強化のためには政府支援とともに、国立大学自身の自律的改革が共に不可欠であるという強いメッセージが込められています。私は、国の指示を待つのではなく、積極的に我々自身が改革を進め、政策提言してゆく意気込みが必要であると考えています。

 

東海機構の目標は、地域創生への貢献と国際競争力の強化を同時に成し遂げ、わが国の国立大学の未来像を創ると同時に、この地域を世界のだれもが、住みたい、働きたい、学びたいという未来社会の実現に貢献することです。両大学の持つリソースを法人統合の中で最大限活かし、世界有数のものづくり産業集積地である東海地域を基盤として、地域の中核大学としての岐阜大学の機能と、世界と伍する研究大学としての名古屋大学の機能を一つの法人の下で格段に高め、アカデミックインパクトとソーシャルインパクトを最大化して社会イノベーションの推進役になろうとするチャレンジです。

 

東海機構はこれまで、運営の基盤となる事務組織の統合、共通教育の司令塔であるアカデミックセントラル、デジタル基盤の共通化とキャンパスDX化、両大学の強みを融合させた連携拠点支援、コアファシリティー事業、また産学連携の推進やスタートアップ支援を行うTOIC(Tokai Open Innovation Complex)や子会社TII(Tokai Innovation Institute)及び機構VC(Central Japan Innovation Capital)の設立、など、他大学に先駆けて数多くの先進的な取り組みを進めてきました。また国、自治体、産業界と連携した取り組みも積極的に行っています。このように多くの成果を上げてきた一方で、東海機構を構成する岐阜大学と名古屋大学は、それぞれ獲得を目指していた地域中核大学事業、国際卓越研究大学事業に対して、長期にわたり多くの資源を割いて準備にあたってきましたが、残念ながら採択されませんでした。東海機構の最高責任者として、大きな責任を感じています。ただしその準備の過程で、各大学のミッションやビジョン、機構における役割が明確にされてきました。資金面での課題はありますが、すでに一部の改革は国の別の補助金等を得て着手されています。地域中核大学や国際卓越研究大学への申請で描いた構想の実現は回り道になっても進んでゆくよう、機構長としてはこれまで以上に各大学の取り組みを支援するとともに、一法人複数大学下での両大学のシナジー効果の最大化を図ってゆくべく、決意を新たにしています。

 

今の時代においては、もはや個々の大学が壁を作ってタコつぼ型で個別発展できないことは明らかです。東海機構はこの状況を打破するために、愛知、岐阜、三重、静岡、長野の5県の9つの国立大学と6つの高等専門学校が互いに連携できる枠組みC2-FRONTS(シー・フロンツ、Collaboration and Co-creation Framework of National Universities and Colleges in Tokai and Shinshu)を立ち上げました。今後アカデミアが社会の変革に大きく貢献するためには、複数の大学がシステムとして教育研究事業を展開する必要のある場面が多くあるものと思います。C2-FRONTSはその先駆けとして、東海機構が先導して進めている国立大学・高専のプラットフォームです。この枠組みで今年度、東海信州地区の国の半導体人材育成事業に採択されたことは朗報です。今後このプラットフォームを東海信州地域の国立大学システムとして、組織的戦略的に機能させて全国のモデルとするべく、ブラッシュアップをしてゆきたいと考えています。

 

最後になりますが、2026年は午(ウマ)年です。馬は古来、スピードとパワーの象徴です。構成員の皆様の知恵や能力は大変高いものがあると思います。現代の激動の時代に必要なのは、スピードとパワーです。これらを融合させて、神(上)頼みではなく、我々自身の力で魅力ある大学づくりに向けて大きく前進する年にしましょう。 

 

国立大学法人東海国立大学機構

機構長  松尾 清一

 

 

 

 

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