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新年のご挨拶

2025年1月 6日

新しい年を迎えるにあたり、ご挨拶を申し上げます。

2020年4月に、国立総合大学である名古屋大学と岐阜大学がわが国で初めて県をまたいで法人統合を行い、一法人複数大学方式による新たな国立大学法人東海国立大学機構(以下、東海機構)がスタートしてから、5年が経とうとしています。東海機構は地域創生への貢献と国際競争力の強化を同時に成し遂げ、わが国の国立大学の未来像を創るという大きな目標を掲げて、活動してきました。両大学の持つリソースを法人統合の中で最大限活かし、世界有数のものづくり産業集積地である東海地域を基盤として、地域の中核大学としての機能と、世界と伍する研究大学としての機能を一つの法人として格段に高め、アカデミックインパクトとソーシャルインパクトを最大化しようとするチャレンジです。

 

これまで、運営の基盤となる事務組織の統合、共通教育の司令塔であるアカデミックセントラルの構築や博士課程、デジタル基盤の共通化とキャンパスDX化の推進、両大学の強みを融合させた6つの連携拠点の構築と支援、コアファシリティー事業(東海国立大学機構統括技術センター、THERS Tech)の設置、また最近では産学連携の推進やスタートアップ支援に向けてTOIC(Tokai Open Innovation Complex)や子会社TII(Tokai Innovation Institute)の設立、さらに機構VC(Central Japan Innovation Capital)の設立、など、両大学が連携して進めてきた取り組みは数多くあります。また自治体や産業界と連携した取り組みも積極的に行ってきました。その一方で、東海機構の課題は、これらの取り組みの成果が教職員と学生あるいは社会からみて、まだまだ十分に実感できていないことだと思います。新たな年を迎え、機構長としては、構成員にとって働き甲斐のあるキャンパスの実現を目指して教育研究の環境づくりに注力するとともに、社会に対してもしっかりと東海機構並びに両大学の情報発信をして行きたいと思っています。

 

昨年は改めて人類社会が直面している深刻な課題が浮き彫りになった年でした。地球規模の気候変動の影響が一層深刻になる一方で、国家間の対立と戦争・紛争の長期化、経済格差の拡大と政治の不安定化による社会不安など、世はまさにVUCAの時代となっています。我が国においても、少子化が予測を超える速度で進展し、社会経済の面でも地政学的にも厳しい状況に置かれています。高等教育とりわけ国立大学も例外ではなく、大きな転換を必要としている時期であると思います。このような中で、もはや個別の大学が壁を作ってタコつぼ型で発展できないことは明らかです。この状況を打破するために、昨年、東海機構の呼びかけで、愛知、岐阜、三重、静岡、長野の5県の9つの国立大学と6つの高等専門学校が互いに連携できる枠組みC2-FRONTS(シー・フロンツ、Collaboration and Co-creation Framework of National Universities in Tokai and Shinshu)を立ち上げ、多くの連携課題が提案されています。

 

ピークを過ぎて坂道を下っているように見える日本ですが、長い歴史の中で培ってきた良いところもたくさんあります。それをこのような枠組みを使ってどう活かすかが問われています。日本、そしてこの東海地域が、世界のだれもが、働きたい、住みたい、学びたい、そしてウエルビーイングを享受できる社会になるために、東海機構が大学改革の先駆けとして、社会の多様なステークホルダーと連携し、大きな貢献を果たすことができるようになりたい、と心から思っています。

 

2025年は巳年です。巳は蛇に代表されるよう、脱皮しながら成長を続ける象徴です。古い殻を脱ぎ去って、新たな成長を遂げる、そのような変革の年になればと願っています。そしてこれは神頼みではなく、我々自らが努力して勝ち取るものです。困難な課題に挑み、新たな地平を切り開くために、一緒に前に進んで行きましょう。

 

国立大学法人東海国立大学機構

機構長  松尾 清一

 

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