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年頭のご挨拶

2024年1月 1日

機構長メッセージ

 新年、明けましておめでとうございます。東海国立大学機構の構成員及び当機構にご理解とご支援をいただいておりますすべての皆様に、年の初めのご挨拶を申し上げます。

昨年の年頭あいさつでは、「世界と日本は多くの深刻な課題を持ち越したまま、2023年を迎えました」の書き出しで、皆様にメッセージを送りました。その後コロナ禍は世界中で概ね落ち着き、人の動きもコロナ前に戻った感がありますが、残念ながら、人類社会は深刻で解決困難な課題をより一層拡大させながら、2024年をむかえました。一方で、だれ一人取り残すことなく人々が幸せに暮らせる社会の実現に向けて、世界中で多くの人々が粘り強く努力を続けています。国立大学をめぐる状況は大変厳しいものがありますが、東海国立大学機構(以下、東海機構)は地域や世界の人々と連携しながら、社会の公共財として国立大学が地域と人類社会の課題解決に貢献する「知とイノベーションのコモンズ」になるべく、一歩ずつ歩んでいきたいと考えています。 

 

2020年4月にわが国で初めて、県をまたいで国立総合大学同士が法人統合して誕生した東海機構ですが、コロナ禍の厳しい状況の中で基盤固めの時期(第1ステージ)を終え、昨年度から新たな段階(第2ステージ)に入ったと考えています。昨年の東海機構を振り返りますと、いくつかの大きな成果を挙げることができました。東海機構の基盤整備として取り組んできた事項で最も重要と考えているのが、教育の共通基盤の確立です。そのために両大学の教育支援組織をアカデミック・セントラルという形で融合させ、リベラルアーツ、語学(英語)、情報リテラシーなどの共通教育を充実させる取り組みを進めてきました。その基盤となるのが学修マネジメントシステム(LMS、Learning Management System)の統一です。教育コンテンツの共有や、学習の評価、意見交換など、両大学が一つのシステム上で行えるようになりました。これにより本年度は40を超える共同開設科目が開講されました。まだささやかではありますが、ようやく両大学の学生にとってメリットが享受できる端緒が開かれたと考えています。

 

また、両大学の強みを活かす連携では、2022年に全国共同利用共同研究拠点として認定された統合糖鎖研究拠点iGCOREを中核として、ヒューマングライコームアトラス(HGA)プロジェクトが国の学術フロンティア事業に生命科学分野で初めて認定されました。これにより、世界をリードする糖鎖研究のデータベースや基盤整備が東海機構を中心に構築されることが期待されています。今年度は、One Medicine創薬シーズ開発・育成研究教育拠点と低温プラズマ総合科学研究拠点の二つを新たに連携拠点として認定し、合計5つの拠点を機構として支援しています。これらの拠点がわが国を代表するような拠点、そしてまた世界と伍する成果を挙げる拠点として成長することを期待しています。産学連携の取り組みでは、両大学が共同して産学連携やスタートアップ支援に取り組んでいくための施設整備(TOIC、Tokai Open Innovation Complex)も進めています。岐阜大学は昨年末、名古屋大学には本年5月に建物が完成します。両大学とも産学連携実績を着実に伸ばしているところですが、今後さらなるシナジーを発揮して社会との連携を一層推進することが期待されます。

 

さて、人類社会や我が国の状況は引き続きかつてない規模とスピードで変化しており、国立大学をめぐる国の大学施策にも大きな変化があります。その典型的な事業が国際卓越研究大学(いわゆる10兆円ファンド)であり、地域中核・特色ある研究大学総合パッケージです。名古屋大学は国際卓越研究大学を、また岐阜大学は地域中核・特色ある研究大学をめざして、大学改革に取り組んでいます。昨年は残念ながらいずれも認定には至りませんでしたが、今年は各大学のビジョンを一層ブラッシュアップし、ガバナンスや財務経営など機構がその実現のために有効に機能するような全体構想を作り、チャレンジを続けたいと思います。世界と東海地域を俯瞰して一法人複数大学システムを創造してゆくことは、前人未到の道を切り拓くことであり、日本の国立大学の未来の形を創るという意味でも、重要な取り組みであると考えています。また、東海機構と他大学との連携の促進についても柔軟かつ多様な形で進めてゆきます。やること成すことすべてが初めての経験ですが、それがわが国の大学改革の経験知となるよう、私たちは未来に向かって人類と社会の課題解決に貢献する新しい大学像を創るために、「Make New Standards for The Public」というミッションを掲げて、諸活動を進めてゆきます。2024年は干支は甲辰(きのえたつ)で、甲は小さな芽が大きな木に育つ様子を、また十二支で唯一想像上の動物である辰(たつ)は天高く昇ってゆく様を表しています。今年4月に誕生後5年目を迎える東海機構が、2024年に日本の大学改革をリードするような大きな飛躍を遂げることができる年にできればと強く願っています。多くの困難があり険しい道のりではありますが、皆様のご理解、ご支援、ご協力を得て「for the public」の精神で活動し、社会から高く評価され、人材、知、資金の好循環が実現できるよう、すべての皆さまと共に進んでゆきたいと思います。

 

 

国立大学法人東海国立大学機構

機構長  松尾 清一

 

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