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年頭のご挨拶 
「Make New Standards for The Public」

2023年1月 4日

機構長メッセージ

新年あけまして、おめでとうございます。新しき年を迎え、謹んで初春のお慶びを申し上げます。

世界と日本は多くの深刻な課題を持ち越したまま、2023年を迎えました。新年早々昨年を振り返るのは本意ではありませんが、ウクライナ戦争とそれに伴い急浮上した安全保障問題やエネルギー・食糧問題、円安と諸物価高騰と賃金の停滞、地球温暖化と気候変動、遷延する新型コロナ感染症、格差の一層の拡大と分断、これらに伴って増大する将来への不安など、昨年は改めて私たちが直面している厳しい諸課題に否応なく向き合わされた年でした。我が国では少子超高齢化の加速度的進行や国民の相対的貧困化、政治経済社会システムの革新が遅れて構造疲労が進み、未来への希望が持ちづらい状況があります。ここ数年、世界で起こった様々な出来事は、すべてのセクターやステークホルダーに社会丸ごと改革を厳しく迫っています。

 

わが国で初めて県境を越えた国立総合大学同士の法人統合により2020年に誕生した東海国立大学機構(以下、東海機構)は、まさにこのような危機感の中で生まれたものといえます。2018年に両大学で統合の基本合意ができたときには、コロナ禍やウクライナ戦争が起こることなど、全く予測していませんでした。しかしはっきりしていたことは、少子超高齢化が加速度的に進行し社会経済システムが構造疲労を起こす中で日本のプレゼンスは縮小を続け、高等教育の要である国立大学のプレゼンスも世界との比較でみたとき同じように後退しているという現実でした。コロナ禍やウクライナ戦争はこのような予測を前倒しする形で、現実のものとして私たちに容赦なく突き付けたと思っています。私は大学人の一人として、深刻で解決困難な多くの課題にずっと向き合っていかなくてはならない時代に生きていることを、年の初めに強く胸に刻んでおきたいと思っています。そのうえで、この状況を打開するためにアカデミア、特に社会の公共財である国立大学法人東海国立大学機構(以下、東海機構)が何をなすべきか、年の初めに設立の原点に立ち返って考えてみたいと思います。

 

東海機構の設立目標は、「地域創生への貢献と国際競争力の強化を同時に成し遂げる新たな国立大学法人モデルの創出」です。すなわち、東海地域という世界有数の産業集積地を将来にわたりラストベルト(錆びついた地域)にすることなく、人間中心のTech Innovation Smart Societyに創りかえることに貢献し、そのような活動を通じて世界と伍するリーダー大学になることを掲げました。この狭い日本で、しかも人口がどんどん減少してゆく日本で、多くの大学がお互いに壁を作っているような現状は決して社会的に容認されるものではありません。「for myself」は論外ですが、我々は、「for my department」や「for my university」ではなく、「for the public」のために英知を結集して課題解決に向かうべきであると強く思っています。そのための新たな大学像を創ることが、標題に掲げた「Make New Standards for The Public」に込めた意味です。我々は社会の公共財として、「知とイノベーションのコモンズ」たるべきであると思います。

 

東海機構設立協議の過程で中期的な時間軸を3つに区切りました。すなわち、国立大学法人の第3期中期目標計画期間が終了する2021年度末までを第1ステージ、第4期中期目標計画期間の前半が終了する2024年度末までを第2ステージ、そして後半が終了する2027年度末までを第3ステージとしました。

第1ステージでは、誕生したばかりの東海機構の組織基盤をしっかりと構築し、安定した運営ができるようにすることが目標でした。そのために、法人統合によるメリットを生かして、両大学の連携下で事務統合や東海機構が主導する教育・研究・社会連携事業(機構直轄拠点・事業)などを含む、第1ステージのビジョン(スタートアップビジョン=東海機構ビジョン1.0)を掲げました。我が国初めての試みである東海機構の設立は、文字通り「走りながら、考える」精神で、改革を進めることが必要でした。東海機構発足時からコロナ禍が猛威を振るい、まさに嵐の中の船出でしたが、対面での会議や協議ができない中、オンライン会議が強制的かつ急速に普及し、これをフル活用して平時よりも濃い密度で意見交換できたことはラッキーでした。第1ステージが終わる昨年末には、両大学の連携や融合という点でまだまだ課題はあるとは言うものの、機構構成員の皆様の真摯な取り組みにより、おおむね予定通りの進捗が得られたものと考えています。

 

第2、3ステージは、東海機構がその機能を発揮して大きく展開する時期であり、2022年度はまさにその始まりの年です。この時にあたり、私はスタートアップビジョンに続くビジョン2.0の策定が必要と考え、「Make New Standards for The Public」を旗印にして、時代の変化の中で東海機構が公共財として、社会のために常に新たなスタンダードを作り続ける、「知とイノベーションのコモンズ」になることを掲げたいと思っています。本来なら2022年度初めに機構ビジョン2.0を確定し公表すべきところですが、国の諸政策との関係もあり遅れていることをお詫びいたします。しかし今年度中に、名大、岐大のビジョンと連動する形で機構構成員の皆さんと共有し、外部にも発信してゆきたいと考えています。

 

国においては国立大学改革をさらに進めるため、諸基金創設など新たな政策を立案・実行しています。その中で、名大は国際卓越大学を、また岐大は地域中核大学を目指し、機構全体として、地域創生へのインパクトある貢献と国際競争力の格段の強化を同時に達成することを目指します。今年は機構にとっても両大学にとっても大きな試練の年となりますが、新たなStandardsをつくるため、一緒に歩んで行こうではありませんか。 

 

国立大学法人東海国立大学機構

機構長  松尾 清一

 

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